JOHN HART

アメリカの作家ですが、英国推理作家協会の最優秀スリラー賞受賞作の『 ラスト・チャイルド(The Last Child)2009年』を読んでみました。陰惨な場面は減らしているものの、そこはそれ、一般的なアメリカ人読者が喜ぶような血なまぐさい描写がそこかしこに描かれています。そんなわけで、この本は個人的にはいまいちなのですが、ミステリとして捉えれば、ストーリー構成そのものは悪くありませんし、最後まで「誰がなぜ?」に読者は引っ張られます。ここに取り上げられているように、一般的なアメリカ人の家庭は結構病んでいるようにも覗えますが、読み手的には「他人の不幸は蜜の味」とでも言わんばかりに、離婚話や親子の断絶、薬物中毒に家庭内暴力など、思いつくようなひと通りの家庭問題は列挙されています。もしかすると、こうでもしないと本は売れないのかも知れません。よくある公の場でアメリカ人が発する、パートナーや家族に対しての美辞麗句も、実際にはこうした世界の裏返しなのかも知れません。思い出しましたが、その昔、米国に語学留学したときに、一番はじめに覚えた言葉は「Superficial=皮相的な」でした。うわべだけのやり取りは、謂わばアメリカ的でもあり、少なくともアジア人社会的には先ずもって理解できない話です。アジア人の間では、おべんちゃらまで言って、事実を隠すような言動は、通常は慎むものですが。最後に、タイトルの「最後の子ども」の意味するところがエピローグまで分かりませんでした。そうした点では、完成度の高いミステリだと思います。