レイチェル・ウェルズ

このところ、あれやこれやで公私ともに小忙しいこともあり、疲れが溜まっており、師走は軽めの本で流してみることにしました。手にしたのは『通い猫アルフィーの奇跡』です。タイトル通り、猫を主人公とした物語ですが、「飼い猫」ではなく「通い猫」というのがミソです。年老いた飼い主や飼い猫と一緒だったアルフィーは、とても悲しい別れがありました。相続者は家を売却し、飼い猫も施設に入れてしまおうとしましたが、彼(オス猫です)は逃げ出します。首尾よく次の飼い主に出会うまでのあいだ、幾日も野良猫として厳しい状況に陥ったことで、別れの悲しみや、放逐されるリスクを最小化するために「通い猫」という選択を取ったのです。こうしたプロセスの中で、様々な人間関係が絡み合い、アルフィーの周りで繰り広げられます。猫を毛嫌いする人々も少なくありませんが、心が傷ついていたり、寂しさや悲しみに暮れている者にとって、猫という存在は大いなる癒しになって行きます。このことは、猫を飼っている家の実感としてよく理解できます。文中に「たいていの猫には善人と悪人とを見分ける能力が備わっている」と書いてありますが、思い当たる節があります。猫はご存じの通り、人のために「何かをしてくれる」存在ではありません。別の言葉でいうと「役に立たない存在」です。それにも拘らず、意地悪や乱暴をせずに、優しい気持ちを向けていくことができる人間というのはどうでしょう?少なくとも悪人とはいえませんね。心がほっこり暖かくなる物語です。