リチャード・ハル

倒叙ミステリーの草分けでもある、ハルの『伯母殺人事件(伯母殺し)』を読んでみました。古典なので手許に置いていてもよかろうと思い、ブックオフで予約したのですが、なかなか出物がないので、勤め先の近所にある図書館の書庫にあるものを取り寄せました。案の定かなり傷んでいましたので、注意しながらページをめくりました(脱頁寸前!)。さて、内容ですが、おなじ倒叙ものであるクロフツの『クロイドン発12時30分』を読んだときもそう感じたのですが、そもそも犯人が初めから分かっていると、全体構成としては面白さは削がれてしまうと個人的には思ってはおります。ところが、世間さまの評価はどうやら違うようで、どこもかしこも、これらのミステリを大絶賛しているようです(自分はまだ読んでいませんが、アイルズの『殺意』がこれに加わって「三大倒叙ミステリ」としているようです)。さほど長くない話なので、ささっと読み終えると思いきや、慎重なページめくりに加えて、登場人物(主人公)の性格にほとんど共感できないので、すぐに本を閉じてしまいます。なので、読み進めるのが、けっこう苦痛でした。しかも一人称を使った文章なので、主人公への反発心はさらに強くなった気がします(著者的には狙い通りかも知れません)。終章で展開ががらりと変わりますが、問題の解決策としては、どうしようもなく後味が良くない終え方になっております。大好きで幾度も読み返した、という読者が多いようですが、自分的には時間と精神の無駄なので、たぶん恐らく読み返すことはないように思えます。

bsh