ノーマークでしたがフィルポッツの『溺死人(FOUND DROWNED)』(1931年)が都心の図書館にあったので(状態もすこぶる良好)、借りてきて読んでみました。『赤毛のレドメイン家』などに比べると、あまり話題になっていない本ですが、そこは大好きなフィルポッツ、じつに楽しく読ませてもらいました。こうしたフィルポッツの作品を原書で読むことが出来る英米圏の人々は幸せだなあと考えておりましたが、実態はどうも違っているようです。ミステリ評論家の戸川安宣氏による巻末の解説では、本国でもさほどフィルポッツは紹介されていないようです。むしろ、かの江戸川乱歩が高評価をこの作家に与えたためか、むしろ邦訳本は英米圏よりも、氏の作品を目にする機会も多いとか、意外なことを語っておりました。そうなると、私たち日本人は結構恵まれた境遇なのかも知れませんね。フィルポッツの作品は、どれもそうですが、人の心の奥底にある想念の描写が格別で、今回もえらく感銘を受けました。「私はね、人の話し方を何より信じるたちなのですよ、先生。そのほうが、その人の口にしている言葉以上に、内心を示していることもありますものね。」下宿屋のおかみでもあるウィルソン夫人の言葉ですが、これって、けっこう的を得た話だと感じました。









