A・A・ミルン2

『クマのプーさん』で有名なアラン・アレグザンダー・ミルンのミステリ
『Four Day’s Wonder:四日間の不思議』を読んでみました。1920年に息子クリストファー・ロビンが生まれてから、氏は作品を子供向けのプーさんシリーズに舵を切ってしまいましたが、1933年に発表されたのが本作です。そんな背景からして、この本はいわゆるミステリ小説とは云えません。ユーモア盛り沢山の、ある少女の恋愛そして成長譚のようなものです。誰が犯人か、どうやったのかなど、ついついやり勝ちの余計な詮索(推理)をせずに、あまり肩ひじ張らずにのんびりと文字を読み進めた方が、この本の良さを愉しめるかも知れません。イギリスという国の面白さは、こうした少女時代からすでに、ちょっとしたユーモアやウィットが社会として醸成されている点です。物ごとを真正面から、生真面目に見据えて対処すると、衝突や失望だけで面白くもなんともない結果を招くものですが、すこしだけ(この加減が大事)ずらして見ていくことが、とりわけ人間関係のやり取りの中では、円滑かつ巧みに過ごしていくことが出来ます。国際政治の場でもよく云われる「イギリス人は曲者だ」という形容は正しいものではなく、どこかしら逃げ道や遊びを設けておくことが、社会や人も平穏に生き延びていくためには不可欠な要素になります。