アンソニー・ホロヴィッツ2

ホロヴィッツの作品は、名探偵アティカス・ピュントが登場する「スーザン・ライランド」シリーズと、探偵と作者自らが登場してくる「ホーソーン&ホロヴィッツ」シリーズに大きく分かれます。他にもヤングアダルト作品の「アレックス・ライダー」あるいはコナン・ドイル財団公認の「シャーロック・ホームズ 」シリーズ、テレビドラマの脚本では「刑事フォイル」シリーズなどを手掛けていて、それらがことごとくヒットしているので驚くばかりです。プロットを組み立てる頭の構造が常人とは異なっているように思えます。
今回読んだのは、『その裁きは死』です。この本は「ホーソーン&ホロヴィッツ」シリーズの二作目にあたりますが、ホロヴィッツの俯瞰力は超人的なので、この作品はおそらく、彼のもつ大きなストーリー〔パズル〕のなかの1ピースになっていると思います。それにしても、嫌な人間ばかりが出てくるので、途中で閉口してしまいましたが、何といっても一番イヤな奴は主人公のホーソーンですね。こうした人間には近づかないのが一番ですが、ワトソン役のホロヴィッツ君は巻き込まれて、物語の中で翻弄されてしまいます。一見するとホロヴィッツは間抜けな善人を演じていますが、わたし的にはそれは嘘であり、実際にはホーソーンに限りなく近い人間なのでしょう。そうでもなければ、あれほど多くの秀逸な探偵作品を描けるはずはありません。