John Dickson Carr 3

名作との誉れ高い『三つの棺:The Hollow Man』を読んでみました。例によって、カーお得意の密室殺人のトリック解析が物語の骨子になっています。こうしたハウダニット好きなミステリファンにとっては堪らない小説なのでしょうが、こうしたトリックものより心理描写を重視する自分としては、選択を失敗したということでしょう。読み終えて感じたことは、「他人の評価は鵜呑みにできない」ということでした。ミステリとかいう定義は幅が広いので、読む前にそのプロットをざっと知っておく必要がありますね。さもないと、とんだ時間の無駄使いになってしまいます。これはあくまで本との相性の問題で、作品の巧拙とは別次元の話です。おそらくは、カーの作品で自分にもっとフィットするものがあったと思います。ミステリの世界の密室殺人はオカルトやSFではないので、それを成立するためには、必ずトリックが二重三重に張り巡らされております。トリックは人(=犯人の頭脳)が構築されて実行されるわけですが、そこに「偶然」という(犯人が)想定外の要素が加わると、そのロジックが崩れたり、場合によっては更に複雑怪奇になってしまったりする訳です。この小説では「降雪」だと思いますが、偶然を含めた結果をみて、何が元々の犯人の計画で、何が偶然要素なのかの区分けもしながら謎解きをすることになるので、なかなか一筋縄では行かなくなります。犯人にしてみると、要は「思うようにはなかなか行かない」という月並みな言葉に代表される事態になり、逮捕されたり、場合によっては命を落としたりしてしまうというオチが付いて回ります。今回のトリックは、天才的なフェル博士が見事な解析を行うことになるのですが、普通の探偵や警察だと、おそらくまるで違った結末(迷宮入り)になってしまったことでしょう。いずれにしても大したトリックです。