R・オースティン・フリーマン3

正直、ソーンダイク博士には振り回され続けています。『オシリスの眼』『ニュー・イン三十一番の謎』も、完膚なきまでのロジカルな展開をして、真犯人を追い詰めていくわけなのですが、今回ご紹介する、1928年に発表された作品『証拠は眠る:As a Thief of the Night』の展開には、流石にぶっ飛びました。どのような仮説も立証できなければ、何の役にも立たないのが刑事事件の常です。ソーンダイク博士はありとあらゆる、小さな事実を集め、積み上げて、整理し、解析することで、その仮説の立証(物証)を掴んでいくという訳です。タイトルにもあるように、その物証への強いこだわりは、たとえ時空を超えようとも留められるものでは無いようです。トリックもの、謎解きものは基本的には好みではないのですが、ソーンダイク博士のスタンスには、見事なまでの背骨がしっかり存在しているので、読んでいて非常に気持ちのいいものです。このシリーズと哲学は、これからの自分にとっても大切なものになりそうです。