Agatha Christie 50

週が明けたので、そろそろお屠蘇気分とはお別れです。年始はいつも飽食で体調を崩しがちなので、これからしばらくはエコ運転を心がけなくてはいけませんね。
さて、クリスティの書評から始めましょう。彼女の作品ともなると作品書評集なるものが、あちらこちらから発刊されていて、作品ごとに星幾つなどとかいうレビューがされてしまうのですが、わたしが手にした『死が最後にやってくる:Death Comes at the End』(1945)などは五段階評価の星一つだけと散々な評価を受けているものです。
この本は、紀元前二千年にナイル河畔に住む貴人の墓所守の家に起きた殺人劇を描いているものですが、それから四千年あとになる現代社会になぞらえても、全く違和感を感じさせることのない内容になっています。つまりいくら歳月が過ぎても、人の心の奥底の黒い感情は少しも変わりがない、という話なのでしょう。いろいろ感じることが多い一冊でした。やはり「世間の書評は当てにならない」ということを再認識しました。兄弟間、嫁さん同士が心の奥に持っている火薬が、愛人の出現というきっかけで、ボッと火がつき爆発するという図式は、まさに現代劇にそのまま当てはめられます。そこに陥らないためには、広い視野をもって、移ろい変わりゆく世界に適応できる心を持つということ。肝心なことは「どう楽に幸せに生きていくか」ではなく「何があっても、どれほど満ち足りた死を向かえるか」という点に尽きるということでしょう。エジプトが舞台になっていることが、そうした思考の意味合いを象徴しているのでしょう。