Keigo Higashino <東野圭吾>

ひたすら英米ミステリばかりを読み続けていると、たまには日本人の作品も読んでみたくなります。数年ぶりに手を出した東野圭吾氏の『クスノキの番人:THE CAMPHORWOOD CUSTODIAN』(2020)を手にした理由はタイトルにありました。クスノキ(楠)は都会でもお馴染みの樹木ですが、樟脳が採れることから、かって植民地だった台湾でも大規模なプランテーションが経営されていました。巨木になるので、地域の指定巨樹やちょっとした神社の神木などでも、この樹を目にした機会は多いかと思います。曲がりくねった太い枝が特徴で、たしかに見ていると何かが宿っているようにも感じます。そんな樹を主題にあげた物語で、その時計は私たちより遥かに長く、多く人々の生きざまを眺めてきたことでしょう。そのように人間の暮らしを超越した存在へのリスペクトは日頃から感じてきましたが、この本の肝心なテーマは時空を超えた人の想念のことでした。人はやがて老い、この世界から消えてなくなりますが、想念ははたしてどうでしょう?もしも伝え切れてないことがあるのならば、クスノキの精霊に託すのも一つのやり方かも知れません。