Jo Walton 2

『図書室の魔法』 からおよそ二年ぶりにウォルトン女史の小説を読んでみました。今回は『わたしの本当の子どもたち:My Real Children』(2019)というタイトルの小説で、SFあるいはファンタジー的な味付けをしつつ、その実態はあくまで「個人」「わたし自身」に鋭く深いメスを入れている作品だと感じました。ここで言う「わたし」はそれぞれの「わたし」であって、この世に生まれてから、天に召されるまでの「わたし」が、その都度いかなる境遇にはまって、いかなる選択をしてきたのかを問いかけている物語です。ヒロインが若い時分、仕事もこれからというタイミングで、まだ心が定まっていないときに来た、恋人から求婚のメッセージをどう受け止めるか、つまり「ノー」と言えるか「イエス」と言うかで、それからの世界が様変わりしていくと言った、まあ誰にとっても関心が高まらざるを得ないテーマを描いております。肝心な点として、この小説はヒロインである一個の女性の人生を描くことになっていて、一方を選択した時点で、他方の未来にでてくる子どもたちとは出会うことはなくなります。つまり「選択」とは必ずしも「得るもの」だけでなく、その一方で「失うもの」も同じように生じるという事実です。家族という次元は云うにおよばず、人とのつながりを元にした社会もまた、違った道筋を示していくことになるのでしょう。この本では歴史改変的な核の冬の未来を描いたりもしています。一人一人の選択がやがて未来の有様を変えていく、という見方をすれば、人の集団である国々が愚かな選択をおこない、ひいては深刻な核戦争を起こすような世界になったとしても、それがあながちフェイクとも言えないのでしょう。