Agatha Christie 32

忘れかけていた時分に戻ってくるのがクリスティ作品です。今回取り上げているのは『邪悪の家:Peril at End House(1932)』、いわゆる大作とか有名になった作品ではありませんが、私はけっこう気に入っています。
文中「欠けた要素が謎を解く鍵になる」とポアロが行った言葉にはいたく納得させられました。それこそミステリーの真骨頂なのでしょう。ピースがすべてつながらないから「謎」が生まれるわけで、それを探る(推察する)ことで愉しくなるわけで、クリスティはそれが上手です。誰しも真犯人は見つかりたくないわけで、真実を隠しておく必要があります。そこでポイントになるのが「嘘」です。この作品でも「秘密を守るためには堂々と嘘を並べられる才能が必要なんだ」とポアロに言わせしめた点は、ミステリーを「解読」していく側からすれば、当然配慮するべき事項に当たるものです。ヘイスティングズの役割は、漫才でいうところの「ボケ役」だと云われてますが、実際のところクリスティ自身は「読者をミスリードさせるための道化師役」として、彼を使っている気がします。つまり「トラップ役」です。くれぐれもヘイスティングズの言動に惑わされないようにする必要があります。ちなみに自分自身はヘイスティングズの裏読みをしてしまい、みごとに騙されました。