Ellis Peters 7

エリス・ピーターズ女史の「修道士カドフェル」シリーズの第二作目『死体が多すぎる:One Corpse Too Many』(1979)を読んでみました。12世紀初頭のイングランドでは、スティーブン王と女帝モードとの間で王権争いが続いていて、各地の諸侯は旗色をどちらにするのか悩みながら動いていました。前王ヘンリー一世は娘のモードを後継者に指名しましたが、王が亡くなったときに彼女の居場所は夫の支配する大陸側ノルマンディー。その隙きをついてヘンリー一世の妹の息子、スティーブンが、近隣の貴族を籠絡して王位を宣言してしまいます。筋から云うとモード側に理がありますが、イングランドの諸侯はどちらもノルマンディー出身であり、この王位争いには大なり小なり冷めていました。カドフェルの奉仕する修道院に隣接する都市国家、シュールズベリーはモード側についていたため、そこにスティーブン王が攻め入ります。修道院は中立なのですが、王に歯向かった兵士94人を処刑するに際し、その亡骸を埋葬するための手伝いを行います。カドフェルも参加したのですが、並べられた亡骸はなぜか95体。その一つは兵士ではありません。自分の指示に乗じて殺人が行われたことに怒りを覚えたスティーブン王は、その犯人探しを命じます。カドフェルもその意を汲んで犯人探しをおこないますが、さらに疑念は拡がります。という展開です。今回もまたカドフェルの機転で大団円となりますが、罪と正義という言い方をすれば、双方は100%相反するものではないということです。意識するしないは別として、多くの人々がこの本を読んで共感すると思うのですが、それはカドフェルの言う「正義とは半面の真理でしかない」という言葉を認めているからに相違ありません。