今回はルイザ・メイ・オルコット女史による『仮面の陰に、あるいは女の力:Behind a Mask, or A Women’s Power』(1866)をご紹介したいと思います。オルコット女史は『若草物語』(1868)で有名な作家ですが、有名になる前は、オルコット家は生活にたいそう苦労しておりました。当時、この『仮面の陰に』のような、センセーショナルなエンタメ小説を総称して「煽情小説」とカテゴライズされており、大人気でした。そして彼女もまた、生活のためにこのジャンルの小説をたくさん送り出していました。その理由はシンプルで、「書きやすく、原稿料も高かった」からです。名義も男性作家風にA・M・バーナードとしておりましたので、世間では『若草物語』と『仮面の陰に』とは結び付かなかったのだと思います。実際に判明したのは、オルコット女史が亡くなって、50年以上経ってからのことのようです。そうした意味ではオルコット自身も「仮面」を被っていたのかも知れません。とはいえ、秀逸な筆力をもっている作者ですので、『仮面の陰に』も単なるエンタメ小説にとどまらず、生きていくための女性のしたたかさと、すぐに穴の下を伸ばす男たちの愚かしさなど、いろんなことを教えてくれています。いまでも大して変わりはありません。









