Antony Berkely 5

バークリー氏の最後の長編作とも云われている『パニック・パーティ:Panic Party』(1934)を読んでみました。ハードカバー本で374ページですので、さほど長い部類には当たりませんが、遅々として読み進めませんでした。無人島に残された、15人の人間たちの様々な葛藤を描いた作品とかいう触れ込みでしたので、それなりに関心をもって選んだ本でしたが、ちょっと自分の思い描いていたバークリー作品とは異なった内容でした。外界と途絶した環境で、しかもその中に「過去の未解決事件の殺人犯」がいるかもしれない、とかいう情報が頭に入ると、人間というのは疑心暗鬼のみならず、不安感からヒステリー症状を起こすようなこともあり得る、という筋書きですが、素直に考えると殺人というのは、時制と環境が一定の状況下で発生するものなので、それらが異なるときに、殺人が再発するような(つまり自分が被害者になるような)状況を連想しパニックに陥るというのには不自然さがあります。殺人犯に属人的な要素が全くないとは言いませんが、必要以上に慌てる要素は少ないと自分は感じます。ここでは、主人公のロジャー・シェリンガムが同じようなスタンスで、皆を仕切ろうと奮闘するのですが、あに図らんやそれぞれが暴走してしまいます。ひとの心の構造は様々で、外からの圧に対する耐性も随分と差があると思います。この本を読んで学んだことは、ひとの心を自分の物差しで測ることは難しいというか、無理な話だということです。それにしてもロジャーって、こんなにハードボイルドでしたっけ?