エリス・ピーターズ女史の「修道士カドフェル」シリーズのなかでも最も有名なのが『修道士の頭巾:Monk’s Hood』(1980)です。
シリーズ第3作目で、これも現代教養文庫版です(版元の社会思想社が倒産してしまったため、倒産後は光文社が承継して文庫版を出版しています)。訳者はどちらも岡本浜江さんですが、教養文庫版の前にも1982年に早川書房から邦訳本が出ていますが、これも岡本さんです。邦語訳が少々古く感じるのはそうした歴史からきているのだと思いますが、個人的には好きな訳出です。このタイトルの示すものはキンポウゲ科のトリカブトです。高尾山にもところどころ自生していて、自然観察会のネタになったりします。花が独特の形をしていて、和名は武士の兜に模してつけられましたが、イングランドでは「修道士の頭巾」という名前になっています。強いアルカロイドを含み、少量でも摂取すると命の危険はありますが、塗り薬で使い方を誤まらなければ、貴重な薬草になります。そんなわけで修道院でも薬草として育てられていましたが、こともあろうに犯人はこれをくすねて毒薬として使いました。薬草園の責任者カドフェルは、こうした蛮行に真犯人探しを行います。真犯人探しをするにあたり、この物語ではイングランドとウェールズの違いは言葉だけでなく法律も異なることをあからさまにしました。私たち日本人の多くは、英国は一本と考えていますが、実は生い立ちの違った国々の集合体だと云うことが描かれています。またカドフェルの元の許嫁も登場して人間関係の絡み合いも複雑になっています。面白さは抜群です。









