世界堂書店

米澤穂信が編集したアンソロジー『世界堂書店』を読んでみました。古今東西のミステリを集めた一冊で、あのヘレン・マクロイ女史の短編も含まれていたからです。でも実際には他の物語に感動しました。オーストリアの作家でシュテファン・ツヴァイクの『昔の借りを返す話』は、本当に心に響きましたね。あらためて感じたことですが、およそヒトとしてこの世に生を受けた以上、「他者との出会い」を大切にしていかねばと、この物語を読んで感じました。どこかでだれかに助けられるのか、どこかでだれかに恨まれるのかは、一つひとつそれぞれの出会いを粗末にしないかどうかに掛かっていると思いました。もちろんリアルな出会いを念頭においての感想ですが、すてきな出会いは書においても言えるように思えます。巻末にあった米澤穂信さんの「駅前に佇む数坪の本屋の在庫さえ、私の人生のすべてをまかなって余りある」という一節、本当にそうだと思います。とはいえ、自分が死ぬまでに、できるだけ多くの本との出会いを果たせればと思います。こうしたアンソロジーはきっかけを作るには良いですね。