エラリー・クィーン6

今回のクィーンは『アメリカ銃の謎:The American Gun Mystery』(1933)です。ロデオ絡みのイベントで起きた殺人事件ですが、アメリカの警察は当時からやることがダイナミック、2万人もの観客をスタジアムに拘束してしまうのですから、『ローマ帽子の謎』の劇場封鎖どころの話ではありません。こんなことをしてもクィーン警視は首にならないのですから大したものです。今回も、エラリーのするどい推理で犯人を絞り込んでいくわけですが、何というか、この思わせぶりの展開には、さすがの私もイラっとせずにはいられませんね。「知っているのなら、早く話せよ!」と叫びたくなる気持ちを抑えつつ、読み進んでいくと、いつもの通り自分の推理は、どこぞの当てのない方向に陥っているのです。
さて、私的書評でよくある脱線ですが、今回の凶器であるオートマチック銃なるものが如何なるものか分からなかったので調べてみました。回転弾倉のない銃、ぐらいしか知らなかったのですが、自分の頭の中ではコルト=オートマチック銃と勝手に思っていたのですが間違いでした。シングルアクション・リボルバー銃の開発者はコルトでした(1835)。その後の紆余曲折もあって、コルト社は優秀なオートマチック銃を開発したようです。今回使われた凶器は、25口径というかなり小さな弾を使っていました。軽量人気モデルコルト製のM1908は、女性の護身用にも人気を博し、なんと46万丁も生産されたそうです。別名ベスト・ポケットとも呼ばれ、ベストのポケットにも納められるほどのコンパクトさです。よくみると文庫本の表紙にある拳銃の絵には、リボルバー銃のなかに隠れてベスト・ポケットが描かれています。