Edmund Crispin

都度の食事時には気にならないのですが、独特の香辛料が次第に身体に溜まってきている感じで、腹の具合も徐々に悪化してきているようです。さて本日は、ほとんど知らない作家でしたが、クリスピンが1951年に世に出した作品、『The Long Divorce(永久の別れのために)』を読んでみました。いわゆる謎解き推理ものですが、重厚な文章ではなく、テンポが良く、サクサクと読み進めることが出来ます。ただし、勘の鈍い自分では犯人は最後まで分かりませんでした。しかも、村にやってきた謎の男「ダチェリー」の正体がなかなか明かされないのも、謎めいていてストーリー的に良かったです。イギリスの田舎というのは、美しくのどやかな風景のもと、人間関係はとても狭い世界で、誰もが互いにいちおうは知っているが、その実、誰も本当のことは分かってなく、そこに誹謗や中傷が生まれる余地が出来る。日本も似たようなもので、田舎暮らしが住みにくいと感じる人は、こうした窮屈な感じが苦手なのかもしれない。とか言うとギスギスした展開になりがちですが、そこは作者が上手に、ヘレンやペネロープなどの女性陣を登場させ、魅力的かつ人間的に面白く描いているので、文章全体が柔らかく華やかになっています。クリスピン自身はオックスフォード卒で、推理小説作家以外にも、作曲家であったり、脚本家でもあったりするなど、じつに多芸多才を絵に描いたような人物なので、こうした舞台装置はお手のものなのでしょう。自分自身は謎解きものは好みではなく、敢えて避けているのですが、この本についてはかなり秀逸な作品だと思います。氏の代表作とされる『消えた玩具屋』や『お楽しみの埋葬』も、いずれ読んでみたいと思います。