あの『紅はこべ』を書いたオルツィ女史の探偵もの『レディ・モリーの事件簿:LADY MOLLY OF SCOTLAND YARD』(1910)を読んでみました。この作品は十二の連作短篇集で、ロンドン警視庁に所属している女性捜査官レディ・モリーはその類まれな洞察力を活かして、次から次へと難事件を解決に導いていきます。女だてらにではなく、女性だからこそ仕掛けられる心理分析で、嘘や沈黙を覆して真相を明らかにしていくというストーリーですが、この本が出版された二十世紀の初めは、ジェンダーフリーなどという言葉もなく、男性中心の英国社会の、そのまた代表とも言われる警察組織のなかで女性が活躍するという、まさに時代を先取りするテーマで物語を作ったオルツィの慧眼は素晴らしいと感嘆しています。百十年を経た現代でも十二分に通用する内容になっています。天才というのは、こういう人を指すのでしょうね。他にも女史の代表作としては、有名な『隅の老人』があります。安楽椅子探偵譚の走りで、これもまた近々に読んでみたいと思います。









