R・オースティン・フリーマン2

ここでも紹介した『オシリスの眼』が自分的には気に入ったので、フリーマンの次の作品(第三作目)でもある『ニュー・イン三十一番の謎』を読んでみました。なかなか定職につけない医師ジャーヴィスを、自分のジュニア・パートナーに付けたソーンダイク博士が、今回も大活躍します。前作にもでてきた事務弁護士マーチモントも登場します。かき集めた、一見するとなんの繋がりも感じられない状況証拠(ちいさな事実)を、まとめて整理することで、大きな仮説を導き出すことが出来ます。そしてその仮説を検証していくことで、真犯人の特定に向けて、物語りは一気に収斂していくのです。こうした科学的かつロジカルな手法は、他の探偵小説にもみられますが、この本がだされた時代(1912年)では特筆すべき構成ではないでしょうか?
そして思うに、現代社会に生きる自分たちの生活の中でも、けっこう応用できる事柄が多く示唆されている気もします。目の前に起きている一つひとつの事象を、軽視しないで、それらを理解しながら整理していくことで、ある意味で「生きる知恵」のようなものが生まれるかも知れません。これからもソーンダイク博士ものを幾つか拾い読みしていこうと思っています。