レイ・カーソン

キャサリン・アーデンを読んだときも感じたのですが、もとより自分は冒険ファンタジー小説が好きだったのでしょう。数年前に『獣の奏者』や『守り人』シリーズに入れ込んで、上橋菜穂子さんの作品を片っ端から読んでいたことを考えると、このカーソン女史の『炎と茨の王女:THE GIRL OF FIRE AND THORNS(2011)』にはすんなりハマることができました。王女エリサの成長譚を描く三部作の第一作目は、なかなか読み応えがありました。いくらフィクションとはいえ、極東の島国に住んでいる身では、そこでの暮らしや環境の厳しさをイメージすることさえ困難です。この本では、都市間の砂漠の移動にかなりのページを割いていますが、著者はおそらく砂漠の過酷さが彼女を鍛え上げていくプロセスを描きたかったのだと思います。現代社会では、砂漠の国々というと中近東や北アフリカをイメージしますが、確かに彼らのビヘイビアは「民族」「信仰」をキーワードにして、築かれていますが、ああ言った過酷な環境下では集団の絆がないと食いつないで行けないし、茫漠たる荒野に一人佇んだときには、信仰がないと心が折れてしまうと云うことも理解できます。食いしん坊の少女が、次から次へと襲ってくる悲しみや苦しさに立ち向かい、勇気を持って神意を映し出す王妃に成長していく様を、わたしも見届けたいと思います。