ロス・マクドナルド

奥さんのマーガレット・ミラーを読んだ流れで、『動く標的』を手にしてみました。「あなたって本当にむかつく人ね、年がら年じゅう頭の悪い探偵を演じている自分に、ほとほとうんざりするなんてことは、あなたにはないの?」「ああ、うんざりするとも。だから私には剥き出しで、きらきらしているようなものが必要なのさ。路上の動く標的みたいなものが」私立探偵リュー・アーチャーが初登場するこの本は、ミステリと云うよりハードボイルド探偵小説のカテゴリに属しています。読み進めていくうちに思い出したのは高校時代です。受験勉強そっちのけで、北方謙三、谷恒生、ダシール・ハメットにレイモンド・チャンドラーなどに傾倒していた自分がおりました。禁欲的でカッコいい主人公にあこがれていましたが、残念ながらそのようにはなりませんでした。巻末の解説に出ていましたが、意外なことに作家デビューはマーガレット・ミラーのほうが早かったようですね。彼女に物書きを勧めたのも、プロットを指南したのもマクドナルドだったようです。こうしてみると、才能というのは指南役がしっかりしていれば開花するのかも知れません。