エリー・グリフィス

架空の怪奇短編小説をモチーフにして、現実の学校で起きる殺人事件を描いたグリフィス女史の『見知らぬ人』は、いい意味で踊らされた一冊でした。語り手が幾度も変わり、違った視点でそれぞれが事件を追いかけていきます。読み手は私たち一人称なのですが、語り手の変化で見方が揺さぶられます。少しずつ事態が明らかになっていく一方で、さらなる事件が発生してしまい、ますます容疑者が分からなくなっていきます。
英語教師のクレア、その娘ジョージア、そして女性刑事ハービンダーという、ここでも女性陣の活躍がすごいです。ゴシックホラー感もずいぶんあって、ちなみにタイトルはクレアの研究対象の怪奇短編小説の題名です。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞を受賞しているだけあって、物語の完成度は相当に高いです。それにしても学校というのは怖い場所ですね。思い出しましたが、自分が通った高校は陸軍工廠の跡地にありましたので、怪談話には事欠きませんでした。
ハービンダー刑事の続編『The Postscript Murders』も出版されているし、本名「ドメニカ・デ・ローザ」での小説や、法医考古学者ルース・ギャロウェイのシリーズや、エドガー・スティーヴンス警部のシリーズも出しているので、これらも邦語訳が出たときには、ぜひ読んでみたいと思います。