Graham Greene

彼の作品は幾度か読んでいるかと思いきや、図らずも『情事の終わり:The End of the Affair』が、グリーンとの初の出会いになります。タイトルから分かるように、推理小説ではありませんが、ミステリ性は溢れています。1951年の発表ですので、戦中戦後のロンドンが舞台になる訳ですが、おそらくは、こうした時代背景がまるで不倫の免罪符にでもなっているのかも知れません。あとがきにも触れていますが、これはグリーン自身の私小説的な側面ももっているらしいです。それにしても主人公?でもあるベンドリックスは、嫉妬深くひねくれた嫌な人間を演出していますが、それは作者が自分自身を自虐的に描きたかった為ではないかと見ています。
生きていれば、人は誰しも罪を犯してしまうものですが、加えてカトリック教徒は信仰との板挟みに苦悩しているのでしょう。この本では不倫をテーマにしているので、信仰をもたない主人公は、おそらくは最終的に神への嫉妬に心を砕かれてしまうのです。嫉妬心と云うのは、人間の根源的な性癖なのでしょうが、一たび陥ると相手が誰であれ克己できる性質のものではありません。神相手では勝負にはならないので、ベンドリックスが自己弁護をつづけていく限り、心に平和が訪れることは決して無いでしょう。