レイ・カーソン2

カーソン女史の冒険ファンタジーです。三部作なので一気に読み進みました。『白金の王冠:THE CROWN OF EMBERS(2012)』『魔法使いの王国:THE BITTER KINGDOM(2013)』それぞれ500ページもある長編ですが、小難しい探偵推理モノばかり読んでいると、やたらと速く読み進めることが出来ます。これは内容が薄いのではなく、物語のテンポが速くて、どんどん新たな局面が出てくるので、ハラハラしながらページをめくる手も忙しくなるからです。
筋書きは細かく話せませんが、神の力を示すことができるゴッド・ストーンを身体にもった少女が、多くの仲間たちの助けを借りながら、強大な帝国のトップにまで上がっていくストーリーです。いざとなると、とんでもない力を導き出すことができる彼女ですが、間違った情報に踊らされて戦うことの愚かさより、家族や周囲の人々と信頼し合い、互いに助け合っていくことの大切さを、敵対する周辺の国々にも説きながら、一つにまとめ上げていくという冒険譚です。頑張り屋のヒロインもさることながら、個性が強くて魅力的な仲間たちのキャラが尖っていて、それぞれがたとえ命の炎が燃え尽きても、自らの使命を全うしようと懸命に生きていく様に、震えるような感動を禁じえませんでした。決してライトノベルとは言えず、カーソン女史は大した筆力だと思います。
外国の人々は、こうした「Mission」とか「Responsibility」に強く反応したりするものですが(実際、それを描いた映画や物語は大人気)、翻ると、私たち日本人にはそれらは甚だしく欠けていますね。これは「信仰の欠如」からくるものなのかも知れません。でも、先の大戦中のように間違った空気に一気に染まってしまうのも勘弁してほしいので、ニッポン的には「中庸」ぐらいが丁度良いと感じたりもします。