先にご紹介した『CRANFORD』が気に入ったので、古書店でみつけたギャスケル全集5の『シルヴィアの恋人たち:Sylvia’s Lovers』(1863)を読んでみました。ハードカバーで440ページもあるので大変かと思いきや、各章が短いので(全部で45章も)、休憩しながら読み進めていたら、いつのまにか読み終えていました。今回も、ある港の田舎町(モンクスヘイブン)での市井の人々の暮らしを描いています。イングランド北東部のウィットビーがモデルだったようです。捕鯨の町として栄え、裏では(というより半ば公然と)密輸業にも手を染めていたところです。一人の女性、シルヴィアをめぐる様々な人の行動がテーマになっておりますが、面白いのは人それぞれに思惑があって、表には出さずとも悩み、苦悩しながら日々を過ごしていることを丁寧に描いている点です。心のなかの思いとは異なることを口に出したり、振る舞ったりすることが、いまの私たちの世界でも間々ありますが、ギャスケルの手にかかると物語として見事に描写されるのです。多くの人々がギャスケルの小説を好む理由がよくわかります。そして、人の魂を語るときに、けっして忘れてはならないのが誠実さです。今回も、へスタの生きざまに、それがしっかりと表現されています。主人公も含めて愚かしい人々の言動が雨あられのように降り注ぐなかで、静かに穏やかに生きているしているへスタ。最後には彼女の素晴らしさが、きちんと描かれていたのでとても良い読後感でした。









