Paul Halter

フレンチ・ミステリーに次第にはまり込んでいます。今回はポール・アルテ氏の『金時計:La Montre en or』(2019)です。ここで登場する探偵はオーウェン・バーンズです。現代ミステリーゆえのプロットも洗練されているので、世界的に人気があるのも頷けます。いい作品はどこでも良い作品になるのでしょう。他の作品でも時々ありますが、1911年の冬と1991年の現代を舞台にしながら、過去と現在の2つのストーリーが絡み合いながら進んでいきます。頭がクリアな状態で向かわないとこんがらがります。雪上での足跡なき殺人事件というの一つの柱ですが、そのトリックはさておき、面白いのは過去と未来の絡み合いです。輪廻転生という世界観が、その謎をさらに幻想的で深いものにしていきます。読んでいて感じるのは、遺産や名声などリアリズムを追求する英国ミステリー小説とは一味異なり、情愛に重点を置いたところが、言うなればラテン風のフランス臭さを感じたところでしょう。文芸作品という分野では日本もそうで、銭金よりも色恋沙汰で過ちを犯すストーリーになびくので、そうしたメンタリティでは両国は意外と近いのかも知れません。