前作で気に入ったので、ゴダードの処女作で最高傑作と呼び声の高い『千尋(ちいろ)の闇』(1986)を読むことにしました。古書を探したのですが、いい状態のものが見つからず、少し離れた街の図書館にあったものを借りてきました。英文タイトルは『PAST CARING』で、敢えて意訳をすれば「もはや、どうあっても手を差し伸べることのできない遠いかなたの過去」とかいう感じでしょうか。千尋も古い言葉ですが「はるか深い海の底」という意味です。たしかに過去を取り戻すことは出来ませんが、自分が信じていた過去が本当に正しかったのかどうかを探すことは大変な努力を要するものの、もしかすると出来るのかもしれません。ゴダードの作品は、こうした歴史を掘り起こすことで噴出してくる事件や苦悩を描いています。「信用」という言葉があります。「人の言うこと」がその骨格になっていますが、悪意の有る無しにかかわらず、ひとは時として偽りを話したり、真実を隠したりします。最後は自分の判断でしょうが、この「人の言うこと」ほど当てにならないものはありません。そうした積み重ねが、行動の大きな過ちを起こさせることは歴史が証明しております。この物語はそうしたことが起因の、とても哀しい出来事を長い期間を通じて描いております。主人公の愚かさを度々嘆きながら読み進みました。考えることの多い物語でした。









