アーサー・コナン・ドイル

NHKやU-Nextでは大好きな「シャーロック・ホームズ」ですが、不思議なことにここ数年、小説は読んでいませんでした。読書を再開するからには、やはり第一作目からがよかろうと『緋色の研究』(1886年)から手を付けてみました。定評ある光文社の新訳(日暮雅通訳)なので読み易く、自分は半日ぐらいで読み終えてしまいました。ストーリー構成も面白く、犯行にいたるまでの復讐劇の経緯を、舞台を米国に移した第二部で描いています。ロンドンからユタ州までの幅広い展開には驚きましたが、殺人を犯すほど強い動機となると、やはりこれぐらいの背景がないと、そこまで強い執着は起きないように思えます。(昨今はいとも簡単にキレて犯罪を起こす人が増えておりますが)一連の事件のきっかけとなった、当時のモルモン教徒の一夫多妻については驚きました。その後、こうした風習は合衆国憲法で禁止されました。現代の評論を読む限りでは、信仰の自由を慮って随分と擁護的に思えますが、19世紀当時ではかなり過激な宗派で、カルト的要素が色濃かったようです。ドイル氏自身は敬虔なカトリック家系に生まれたものの、信仰心は次第に薄れてしまったようですが、本人は相当な保守派だったようで、モルモン教徒の教えにはかなり批判的だったはずです。個人的には、心配のタネが増えるだけなので、一夫多妻制には賛同できません。