Luanne Rice

このところミステリー疲れなのか、英米のロマンスものを読み始めています。ルアンヌ・ライス女史の『天にも昇る幸せ:CLOUD NINE』(1999)をご紹介いたします。先入観なく読み始めましたが、彼女の描く魔法めいた自然描写が気に入りました。洋上に突き出したザトウクジラの尾びれを「天使の羽根」と形容したことには、彼女の眼には普通は見えないものまで映し出されているのでしょう。どうやらカトリック系アイルランド人の三姉妹の長女ということで、さもありなんと納得した次第です。父親の病気で大学を中退してから、メイドを手始めに、科学アカデミーの研究員、クジラの調査員、港湾労働者などをしながら小説を書き続けてきたようです。1985年のデビュー以来、28作品中23作品がニューヨーク・タイムズのベストセラーリストのベスト10に入るという、まさにアメリカンドリーム的な経歴の持ち主です。この作品は、ガンから生還した一人のシングルマザーが、自身や家族を襲った不幸に苦しみながらも、あらたな希望を得て生きていこうと頑張っていくことで、逆に身近な人々の心の支えになっていくというストーリーです。涙なくしては読み進めることができません。吉田利子さんの邦語訳は美しく、作者の意図をとても見事に綴っています。巻末のあとがきに訳者自らも泣きながら翻訳を進めたとかいう話には、これにも納得しながらも感動した次第です。