アノー警部の第一作目『薔薇荘にて:AT THE VILLA ROSE』(1910)を読んでみました。この本は「ジョン・ディクスン・カーの上げた十大ミステリ傑作」にも選ばれています。以前に氏の打表作『矢の家』を読んだときに感じた点、①女性>男性の社会化現象、②完全無敵のアノー警部、については、この時点でもかなり濃密に織り込まれていて、今回も同じような印象の(=男顔負けの気の強い)女性陣が物語の主役を務めております。比較するとやはり警部を除くと、冴えない顔ぶれでした。そのアウトラインは既に第一作目から出来上がっていることが分かりました。とはいえ①のステレオタイプ展開にならないように、切れるけれど優しい男(アノー)と、健気だけれどか弱い女(シーリア)を例外的に押さえておくという展開なのでしょう。推理小説としてのプロットはさほど複雑ではないものの、ちょっとした捻りも加えており、多くの読者が愉しめる内容だと感じました。降霊会という演出も、不確実な時代を反映しておりますが、いまや何でもかんでも暴露されてしまう世界に棲息している身としては、こうした謎の多かった時代環境もまた、決して悪いことばかりではないのかな、という気持ちになりました。









