Ellis Peters 20

古書店で売っていた「修道士カドフェル」シリーズ、書棚に残っていた第16作目『異端の徒弟:The Hreretic’s Apprentice』(1989 )を読んでみました。舞台となっている修道院のある街、シュールズベリーは実在しており、ロンドンからは列車の旅で三時間ほどで行けるそうです。また、カトリック教徒の巡礼の地、聖ウィニフレッドの井戸や葬祭もまた実際に残っているという話です。ご存じの方も多いのですが、16世紀、国王ヘンリー8世の離婚騒動以降、英国ではイギリス国教会が勢力を伸ばし、カトリック教徒はイングランドで6%、ウェールズで3%、スコットランドでも16%にとどまっています。ここでは「異端」というフレーズがタイトルにもなっているように、キリスト教宗派内の差(さらに言うと聖書の解釈の違い)が極めて重大な事柄として描かれています。これはイスラム教などの他宗教で似たようなことが起きており、とりわけ一神教における原理主義の座標の捉え方に起因している、と私は考えています。物語のなかで登場してくる、ガチガチの石頭をもつジェルベール大聖堂参事会員が、シュールズベリーでの街で起きるいざこざに首を突っ込んでくることで、巡礼帰りのとある青年が異端信仰の対象に名指しされ、あわや罪人となるところをカドフェルの機転で救われたというストーリーになります。厳格な原理主義者の見解では、道を踏み外した善人は、敵となる悪人や異教徒よりさらに危険、とかいう話なので、八百万の国に棲息している人種にとってはとんでもないロジックです。なんであれ宗教というものは、本来は人の心を幸せにするため存在であり、いわんや人を呪う道具にするものではありませんね。今回も若人のロマンスをちりばめたライトノベルではありますが、人の世の面倒くささを考えさせられる作品になっています。