フェアエーカー村の人々が織りなす、実にのんびりした物語です。『さようなら、フェアエーカー:Farewell to Fairacre』(1993)では、この村と学校が大好きなミス・リード校長先生が体調を崩し、定年を前に引退を決断するという筋書きです。すでにリード校長は嵐で壊れた学校宿舎から、隣の村ビーチグリーンにあるコテージを友人から遺贈されて引っ越しているのですが、人々の接点はフェアエーカーにありました。面白いのは、独身主義者のリード校長に、ときを同じくしてアプローチしてくる男やもめが多いこと。不思議なのは、男というのものは何故に幾つになっても妻帯を好むのでしょう。イギリス社会は日本なぞより個人主義がずっと進んでいると思いきや、どうもそうでも無いようです。だれか連れ合いがいないと、所在がなくなってしまう気がするのかも知れません。基本的に女性は一人でも、むしろ気をつかわず元気で生きていけますので、妙な男性につかまり苦労するよりも、納得できる相手があらわれない限り、無理して結婚する必要はないというのが、古今東西の真理のようです。今まで頑張ってきたやりがいのある仕事を辞めるかどうかは、リード校長自身も悩みますが、大きな決断をしました。「引退」とか言うとネガティブに聞こえがちですが、ある程度の年代に差しかかったら、健康を優先して好きなことに時間を使っていくのが、よりよい人生ではないかと感じました。この作品は今でも多くの方々に読まれていますが、おそらく皆さんは自分を投影して、人生というものを振り返っているのではないでしょうか。









