エリス・ピーターズ女史の「修道士カドフェル」シリーズ第5作目『死を呼ぶ婚礼:The Leper of Saint Giles』(1981)の光文社文庫版のご紹介です。舞台となるのは前作と同じ、1139年のシュールズベリー。女帝モードがイギリスに上陸し、スティーヴン王に対して反攻を開始しつつあるタイミングです。各諸侯は趨勢をにらみながら、自らの領有地を拡大する動きを行っています。武力だけでなく近隣の荘園をもつ娘を婚姻で取り込もうとすることも重要な戦略でした。その犠牲者といえる、愛のない結婚を強いられる哀れな娘イヴェッタ、その婚姻を巡って殺人事件が起こります。そこにカドフェルが絡んで行くというストーリーで、今回もまた面白く読むことができました。魅力的な女性が登場することで物語に潤いを与えますので、そのキャラクターは重要な要素になります。今回の登場人物で気になったのは、見習いの女子修道士エイヴィスです。殺されてしまった悪役領主の愛人だった彼女は、暴君でも善人でも惹きつける人間的な魅力に溢れていて、カドフェルも高い評価をしています。おそらくは次回以降に不可欠なキャラクターになっていくことでしょう。また、ここではハンセン病施療院も描かれています、どこか極東の島国ではごく近年まで差別的な隔離政策が取られていましたが、12世紀のヨーロッパということなので、その扱いは酷いものだったに違いありません。そこで奉仕するキリスト教修道士たちの存在は大きかったと思います。更に云えば、昨今はイスラム社会に対する偏見が激しいですが、彼等もまた昔からハンセン病患者への奉仕の取り組みを熱心に行ってきました。現代になってもまだ見てみないふりをしている、極東の某島国の人々との魂の違いは何なのでしょう。









