アガサ・クリスティ27

クリスティは、エルキュール・ポワロよりミス・マープルを内心では推しているようです。今回取り上げた短編集『火曜クラブ』の冒頭に、との比較で「わたし自身はどちらかといえば、ミス・マープルのかたをもつ」と伝えています。作者自身が女性ということもあるのでしょう。ミス・マープルの話を書いていても、とても楽しかったようです。13話のうちテレビドラマで観た分もありましたが、それでも面白く、十分に楽しめました。個人的には『二人の老嬢』がクリスティのお得意パターンなのですが、さすがだと唸りました。
短編ですと時間の制約のあるドラマではもてはやされます。BBCのジョーン・ヒクソン版、あるいはITVのジェラルディン・マクイーワン版などを観ましたが、いずれも好演で面白かったです。この本でも「わたしはあまり頭の切れるほうじゃありませんけれど、このセント・メアリ・ミードのような村に長年暮らしてまいりますと、人間というものが少しは見えてきましてねえ」とか云いながら、現役顔負けの活躍で、社会をリタイアしたはずの老嬢が颯爽と事件を解決していきます。わたし自身も現役世代をリタイアした身なので、ミス・マープルの活躍には、ある種のカタルシスまで感じますね。こうしたおばあさんが、たくさん出てくると世の中、大いに過ごしやすくなるのですが。何事にも「人の話をよく聞く」「人の仕草をよく観察する」ことが根本にありますね。どちらも自分が不得手なところなので、まずはそこから初心に戻って勉強です。