アントニイ・バークリー2

かねてから気になっていた『第二の銃声(THE SECOND SHOT)』をようやく読むことができました。1930年の作品ということから、えらく古めかしい舞台設定の小説かと思いきや、そんなことは全く感じられず、最後の最後まで踊らされ続けてしまいました。バークリーの話は、登場人物の姿かたちのみならず、心の奥底のひだまで描いているので、その分、自分としては没入しやすいのです。主人公?であるピンカートンは、おそらく私ならば絶対に友人にはなりたくないタイプなのにも拘らずそうなったのは、探偵であるシェリンガム氏の、ついつい笑いを誘う言動や、物事を白黒だけで片付けない鷹揚さにも救われて、一緒に最後まで一気走り続けたからでしょう。それと、忘れてはいけないのは、バークリーやアイルズが描く女性は、とっても魅力的なことです。ちょっと気難しいけれど、アーモレルのような女性に出会えたら、おそらく男性はいちころでしょう。エピローグは余分だったようにも思えますが、やっぱりピンカートンは自分とは相い入れない人間のように感じました。自分ならば、どのような結論でも墓場まで一緒に抱えていくと思います。単なるミステリの世界ですが、こうして人間性や深層心理を振り返ることもできるので、やはりバークリーは最高ですね。