RICHARD HULL 3

ハルの作品では伯母殺人事件が有名ですが、描く主人公、すなわち犯人があまりに劣悪で、他人の評価はともかく個人的には苦手でした。この『他言は無用:KEEP IT QUIET』(1935)の方がむしろ愉しめました。ハルの描く犯人像は、いつもそうですが、かなり捻くれていて、その性格や行動に共感は全く持てません。この作品でもそのパターンを踏襲しております。そんなわけで、この本を沖繩行脚のときに一緒に梱包しましたが、たのしいバケーションに合うはずもなく、結局一ページも読まずにそのまま戻ってきました。とはいえ、もう一人の主人公とも言える、クラブの幹事でもあるフォード氏のコミカルな振る舞いが、この物語を多少明るくしており、それが救いです。この作品の一番の問題点は、老荘の紳士クラブを舞台にしたものですので、当然の帰結として綺麗どころは全く登場せず、その点では残念ながら渋い評価点とならざるを得ません。