司馬遼太郎

海外ミステリはマイブームなのですが、それ以外は読まないわけではありません。はるか昔に読み漁った司馬作品をブックオフで買ってきて読んでみました(なにぶん古い本なので図書館では借りる気がしません)。そうなった経緯はNHKの大河ドラマ、昨今はテレビにかまける時間も無いので、定期的に視聴している番組はこれだけです。いま家老の石川数正が、徳川家康のもとを出奔してしまったところなので、実際にはどうだったのだろうと気になってしまいました。まあ大河ドラマ風に脚色してあるのは分かっているので、ああだこうだと真偽を論じる気は毛頭ないのですが、組織における人の心の機微には関心があって、やはり面白いものです。それにしても、謎なのは、あるじである家康の心のなかです。秀吉とはどうあがいても叶わない内外情勢になっているのに、形だけでも秀吉のところに参上すべし、というロジックを頑なに家康は受け入れません。石川数正は、筆頭家老として、こうした情勢を正確に分析して、家康に注進しているのですが、他の忠臣の感情を逆立ててしまい、結果的に数正は孤立してしまいます。結果的に筆頭家老の出奔という、実に由々しき事態を招いてしまいました。間違いなく家康の失態だと思います。あの老獪な家康であっても、身近な人間の心を汲むことは、かように難しいものなのです。これは昔話ではなく、今でも尚、巷で相も変わらず起きている事象です。コミュニケーションの大切さと難しさは、いまも昔も変わっていませんね。どうするべきか、一律な処方箋は見当たりませんが、自分も言動には留意しながらも、何ごとにも丁寧にことを進めていこうと思いました。