Amanda Cross 2

アマンダ・クロス女史の人気作『ハーヴァードの女探偵:Death in a Tenured Position』(1981)を読んでみました。これまたケイト・ファンスラー教授シリーズですが、ケイト自身がなんと母校ハーヴァード大学構内でおきた事件に巻き込まれます。カレッジ時代に仲は良くないものの、互いに知性を意識し合った同期生が、晴れて母校はじめての英文学科の女性教官(Tenured Position=終身在職権付教授)になったのもつかの間、謎の服毒自殺をとげます。民主主義と自由の国とも云われているアメリカですが、ここ学究界、とりわけ権威の象徴でもあるハーヴァード大学では、教える側に女性が座ることなどは「あり得ないこと」として長い間、男尊女卑の保守的な姿勢に支配されてきました。そのような空気のなか、陰湿ないじめがきっかけとなり、とうとう自死を招いてしまったのです。何が起きたのか、何が彼女の行動を支配したのか、この闇を紐解くために、ケイト自身が研究員となって潜入し、探っていくというストーリーです。前に読んだ『殺人の詩学』でもそうですが、本書でも詩が事件の謎を解く鍵となっています。これを「ミステリ」とカテゴライズすることは、巷の基準では一般的ではないのかも知れませんが、有識者の選ぶ「海外ミステリー名作百選」にも挙げられていることは事実です。個人としての人、集団の一員として関わる人、それぞれの視点で心に光を当てた時、底の見えないその深さを感じたとき、それはまさにミステリーだと言えるでしょう。