Erich Kästner 2

エーリヒ・ケストナー氏の『消え失せた密画』が面白かったので、たまには愉快な本も読もうと、『雪の中の三人男:DREI MÄNNER IM SCHNEE』(1934)を図書館で探しました。ヒトラーが首相になったのが1933年ですので、政権を批判する多くの作家たちの作品が、焚書や禁書、執筆禁止になったりしました。この本も内容的に政権批判をしているわけではないのですが、ケストナーの作品ということで、国内出版が禁止されてしまいました。政府による外貨獲得のため、国外での出版だけが許可されたようで、スイスの出版社から出されたようです。あらためて文芸世界に対する全体主義の酷さを再認識しました。心からの友だちがいない百万長者が登場しますが、その人はちょっとした冒険心といたずら心で、身分を隠して旅をします。そして「なあに、おれが経験しようとしたことにくらべれば、おれが経験しようと思ったことなんか、大したことじゃなかったよ。おれは友だちを一人見つけたんだ。やっと友だちを一人!」という大切なものを得ることができました。人それぞれ人生いろいろですが、一人で生きるよりも、友だちと生きることで、その彩りはますます濃くなることでしょう。根暗なドイツ人が暗い時代に書いた作品、いまでも人々の心を暖かくさせることでしょう。