たまにはファンタジーミステリも悪くはないと手にしたのが『失われたものたちの本:The Book of Lost Things』(2006)です。後で知りましたが、あの宮崎駿が絶賛しているとの噂の作品らしいです。たしかに我儘で心の弱い少年が、数々の試練やすてきな大人たちの支えをもとに、やがて大人になっていくという話なので、最近の映画にもありましたが、彼の世界観と被っているのかも知れません。その一方で、現実世界でも大人のなかには悪いやつも大勢いるので、ここで出てくる「ねじくれ男」や「人の顔をもつ狼」「性悪でわがままな眠り姫」などにも、それが投影されています。それらから受ける試練は辛いのですが、いずれも主人公デイヴィッドが大人になるためのプロセスに欠かせないものなのでしょう。こうした経験を経たからこそ、彼のそこからの人生は大きく変わっていったのでしょう。物語なので異世界ファンタジーとして描かれておりますが、作者が本当に伝えたいのは、私たちが日々、生を営むこの世界の話に他なりません。実際には、子どもたちが誰しも神秘の森や魔界の城に行くことや、危ない冒険を出来るわけではありません。それでも、身近な本棚にある書物のなかには、ちゃんとそうした世界が拡がっていて、それらの本は素敵な世界を用意して、大人になる前の大勢の若い人たちに、開いて読んでくれることを待っているのです。









