Agatha Christie 44

二十冊にも及ぶクリスティの短編集でも、やはりポアロやミス・マープルが出てくるものが、巷では人気なようで、トミー&タペンスやパーカー・パイン、そしてハーリ・クィンものもファンが多いです。いっぽう、ノン・シリーズ短編集は一般受けはしませんので、クリスティ作品のなかでも地味な存在になっています。今回ご紹介する『リスタデール卿の謎:The Listerdale Mystery』も、秀作が多いにも拘らず目立たない存在になっていますが、短編集タイトルにもなっている「リスタデール卿の謎」や「車中の娘」「六ペンスのうた」などは、けっこう愉しく読まさせて頂きました。思うに、常日頃、平穏で退屈な日々を送られている(恵まれた境遇の)読者ならばいざ知らず。あれこれと忙しなく面倒な日常に翻弄されている(自分のような)読者にとっては、本は謂わばオアシスの様な存在であり、そこから得る潤いは、疲れた心身にとっては、かけがえの無い存在になっております。つまり、言い換えれば、読了感の心地良い小説こそ、自分の求めているものなのです。そうした点では、この短編集は悪くない一冊のように思えます。短篇集の良さで、「これはちょっと好みと違う」と感じた単元は飛ばして、気軽に読み進めていいと思います。