ジョセフィン・テイ5

症状は治まったものの、もとの体力に戻るまでには今しばらく掛かりそうです。こういう状況ですと、むやみに動き回らず、ラジオか読書が一番です。ベッドサイドの棚に置いてあるテイ女史の『裁かれる花園』を読んでみました。ロンドン郊外にある女子体育大学で起きた事件を題材にし、1946年にテイが書き上げた作品です。書籍のヒットで著名人となったヒロイン、ルーシー・ピムが講演のため、たまたま訪れた学園で巻き込まれていく事件をテーマとしているのですが、授業や学生の様子が随分と生々しく描いているので不思議に思っていましたが、どうやらテイ女史自身も体育大学の卒業生であり、体育教師の経験も持っていたと知り、合点がいきました。ミステリとしての味わいは薄いかも知れませんが、登場人物の心のひだを、この本でも見事に描いております。神様でもない人間は、にわかに他人を裁くことなど、到底叶いません。最後の最後の展開にはびっくりしましたが、小説なので、それもまた有りという気もいたします。何よりも読んだ後の愉しさを最優先です。テイ女史のことが益々好きになりました。