エミリ・ディキンソン(Emily Elizabeth Dickinson)

以前、ここでも取り上げていたアメリカで最も有名な女流詩人ですが、わずか50編ながら、岩波の対訳詩集を書店で見かけましたので、思わず買ってしまいました。個人的に気に入っている詩があまり網羅されていない点は、やや不満でしたが、それでも沢山のステキな言葉が散りばめられております。生前に世に出した詩は僅かで、それらも真っ当に評価されませんでした。彼女の感性が、生きた時代にはマッチしなかったと、後世では評価してますが、それが正しい見方だったのかは分かりません。そもそも彼女自身が、意識を外の世界に発現しようと考えていなかったのだと思います。まったく別の世界に生きていた人だったのかも知れません。多くの詩作を仕上げていたのは、1860年前後なので、ちょうどアメリカでは南北戦争の最中だったはずです。世の中は大変時な時期だったと察しますが、詩のなかでは、そんなことを微塵も感じさせません。彼女はきっと内面(内なる世界にのみ)に向かって心を開いていたのかも知れません。それであっても、繊細に紡いだ彼女の言葉の素晴らしさは、いつの時代にも揺るがない、謂うなれば絶対的な存在であると感じます。そしていま、思わず心が休まる詩や、元気が出てくるような詩が、頁をめくる度に心をノックしてきます。