ロナルド・A・ノックス

またWEB図書館で借りてみました。ノックスの『陸橋殺人事件』(宇野利泰訳)です。版が古いと、装丁が壊れてページをめくるのも注意が必要になった本や、手垢のついた擦り切れた図書館の書庫に眠っている本などをイメージしてしまいますが、WEB本だと、いくら古くとも気楽に借りて、ぞんざいに読むことができるので助かります。
この小説の中では、イギリス国教会やカトリック教会の話がやたらに出てくるので、何かなと思ったのですが、作者当人は聖職者、それも英国カトリック教会の大司教でした。タレント性のある人は、何をやっても成功するという一例かも知れません。この小説を書き上げたのは1925年のことですが、ノックス自身は、なんと1917年に国教会からカトリックに改宗していたのですから驚きです。ちなみに改宗のきっかけは、G・K・チェスタトンの影響を受けたと言いますから、その人脈もハンパないところだと理解しました。ストーリーは、英国風に軽妙な展開で、それこそあっという間に読み終えました。ハウダニットも拍子抜けで、登場人物の心理描写も含めて、含蓄があるとかいう雰囲気では全然ないので、その点ではやや物足りないのですが、娯楽ミステリ的として読めば、決して悪くはありません。あの時代にこれだけの小説を、しかも聖職者との二足わらじで書き上げたことは、まさに驚愕ものです。