Ellery Queen 3

推理小説に登場する探偵は、いずれもすごいキャラをお持ちですが、個人的には一番魅力的だと感じているのがエラリーです。今回読んだ『フォックス家の殺人』は、敏腕探偵エラリーにとって、なかなかの難物でした。なんと12年前に有罪判決がでた案件の再審査だったからです。エラリーは果敢に調査を進めるのですが、幾度も振り出しに戻ってしまいます。アリバイも状況証拠にも鉄壁な嫌疑がかかっている中で、「私は殺していない」と言う当人の意思だけが、それらの嫌疑に反対をしているだけです。本来ならば、大昔に判決が出た事件の証明はエラリーの領分ではないのですが、その子どもが血筋にトラウマを感じて「このままでは自分も殺人を犯してしまう」とエラリーに訴えたために、動き出しました。それぞれが愛する人の名誉を守るためにつく嘘が、事件をさらに複雑なものに変えてしまいます。イギリス人は本当に「血筋:Bloodline」に強いこだわりがありますね。そうした感性がほとんど無いニッポン人ですが、これからの時代、それはむしろ強みになるでしょう。さて、この小説でエラリーは、持ち前の論理的思考法で、少しずつパズルを解きほぐしていきます。読み終えた後、いたたまれない感じを抑えきれないミステリも多い中で、この小説はすてきな読後感があります。