Dorothy L. Sayers 5

どうしても集中力が維持できないこの時期、やはり短編で凌ごうと、セイヤーズの短編集を借りてきました。井伊順彦氏の訳出による『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』です。タイトルにもあるように、いつものピーター・ウィムジィ卿ではなく(1話しか入っていません)、モンタギュー・エッグ氏のものが6話、そしてノン・シリーズものが6話となっていました。モンタギュー・エッグ氏(モンティ)の物語は自分にとっては初見なので、とても興味深く読めました。英国風の寅さんではないですが、旅をしている酒造会社の行商人のモンティ氏が、行く先々で出会った不思議な事件の謎を解いていくといったもので、一部のマニアは別として、日本ではあ知られていない探偵です。ウィムジィ卿のような個性はないものの、その解決手腕はなかなかの優れものです。 ちなみに、この短編集の中でもっとも印象に残ったものが、ノン・シリーズの『牛乳瓶』でした。「情報というものは誘導されがち」という、現代社会でもしばしば見られる事例がここでも取り上げられています。90年前にも拘らず、こうした人間への見方をしているセイヤーズの、今でも通用する鑑識眼の鋭さを示しているように思えます。

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