アガサ・クリスティ29

有名な探偵「Hercule Poirot」は、日本語表記で”ポアロ”なのか”ポワロ”なのか諸説ありますが、私のエッセイでは早川書房型の”ポアロ”ではなく、創元推理文庫で使われている”ポワロ”を使っています。さて、”エルキュール”の方は、冒頭のアルファベットからも推察できる様に”ヘラクレス”というのには驚きました。ラテン語では”H”は発音されませんので、気がつきませんでしたが、”エルキュール”はギリシア語〔ギリシア神話〕由来だそうです。そんなわけで、ポワロものの短編集『ヘラクレスの冒険:The Labours of Hercules』を読んでみました。正月明けのボケた灰色脳細胞には丁度よい刺激になるかなと考えてのことです。
1940年前後、この頃のクリスティは絶好調、毎年多くの著名長編作を書き上げておりますが、この本に収録されている短編12作のうち11作は、そうした狭間で作られたものです。質的に悪かろうはずはありませんね。自分的には『アルカディアの鹿』『クレタ島の雄牛』そして『ヘスペリスたちのリンゴ』が気に入りました。
短編を読んでいて、どこか既視感が在ったのですが、それもそのはずNHK-BSで数年前に放映されたドラマ『ヘラクレスの難業』は、こうした短編のエッセンスをコンバインした作品になっていました。あらためて、U-NEXTにWOWOWシネフィルを追加して、当時の映像を見返しますと、なるほどこうした短編の脚色もできるものだと感心した次第です。ポワロの想い人として登場してくるロサコフ伯爵夫人も登場してきます。頭に描いていた姿とイメージは近いです。