マクロイ女史が1951年に発表した『二人のウィリング:ALIAS BASIL WILLING』は、文庫本で274ページの中編なのですが、なかなか読み進めませんでした。精神科治療という分野のため、個人的には馴染みが薄い分野〔というか、できれば避けていきたい世界〕と云うこともあったように思えます。とはいえ、精神を病む病まないの境界線はけっこう微妙で、日常生活のちょっとしたことで「垣根の向こう」に行ってしまう可能性はそこかしこに存在しています。ひとつの事象としての安楽死と殺人の境目がそれで、こちらの人には獏として見えないので、故意かどうかの立証にはハードルが高いです。余談ですが、現代でも多くの裁判で精神鑑定が持ち出されるのは周知の通りです。裁判官は無論こちら側の人間なので、垣根の向こうの人々の心理を実感することは困難で、せいぜい想像力を働かせるしかありません。これを利用することで多くのケースが極刑を免れているのでしょう。「鳥は絶えてなし」このメッセージが物語の最初のヒントになります。さすが、マクロイ女史の心理描写はいつもながらですが、人の外見や周囲の光景についての観察眼を、物語の中ではみごとに描写しております。









